
今日の電子機器は携帯電話等に代表されるモバイル機器を中心に、小型・薄型・軽量化が進んでいる。また、異なるメディア間の情報相互活用等の技術融合により、高機能化・複合機能化指向も強まっている。水晶振動子は使用される電子部品の中で電子機器の周波数制御やクロック源として重要な役割を果たしている部品である。
水晶振動子は、水晶片の機械的振動を利用した部品であるため、水晶片の中空保持と気密封止構造が不可欠であるという制約から、コンデンサ、抵抗等の他の電子部品と比較して小型薄型化が遅れていた。しかし、前述の様な電子機器の置かれている状況においては、使用される電子部品に対する小型・薄型化の要求も非常に強くなっており、水晶振動子もこれに対応して小型化を推進してきた。
今回、ATカットを利用したMHz帯の水晶振動子では世界最小クラスとなる、超小型表面実装型水晶振動子「FCX-07」を開発したので紹介する。
写真1及び図1に、FCX-07の製品外観及び外形寸法を示す。
表面実装対応形状で、製品外形寸法は1.6mm×1.2mm×0.4mm。従来のATカットMHz帯水晶振動子で最小の2.0mm×1.6mm×0.5mmサイズと比較して、部品投影面積で60%、体積で48%までのサイズダウンを実現している。

表1に、FCX-07の電気的特性の例を示す。
周波数範囲は、26MHz〜80MHz、周波数の精度を表す周波数偏差(冉/F)は、標準で±15ppmまで対応している。今後はより高精度(例えば±10ppm)の対応や等価直列抵抗の低減、さらに対応周波数範囲の拡大も視野に入れている。

FCX-07の構造は、励振電極を表裏に設けた矩形状の水晶片を、接続配線や実装用端子を設けたケース状のセラミック基板に接続し、金属リッドをセラミック基板上辺部のメタライズにろう付けし、水晶片を気密封止した構成になっている。
気密封止には、電子ビーム封止工法を用いている(図2)。被加工物を真空中に置き、電子ビームを電磁偏向により高速スキャンして封止部分に照射し、封止部分の金属を融解させ、ろう付けすることで封止する。
電子ビーム封止工法によって製造される水晶振動子は、様々な優れた性能を持つ。これらの特長を以下に述べる。
FCX-07では、上記電子ビーム封止工法以外にも様々な要素技術や工夫を新規に採用して小型化を実現している。
水晶振動子の性能は、振動する水晶片の性能に大きく依存する。水晶振動子を小型化するには水晶片を小型にすることになるが、水晶片の性能、特に等価直列抵抗は水晶片の振動部の面積と関係しており、振動部の面積が小さくなると一般的に等価直列抵抗は増大する。FCX-07では、従来の水晶片から大幅な小型化を図っているが、等価直列抵抗の増大を最低限に抑えて性能を維持している。小型水晶片の等価直列抵抗を下げる方法として、一般的にベベル加工と呼ばれる面取り加工を施す。方法はバレル加工の一種であるが、加工後の形状が水晶振動子の性能(等価直列抵抗、温度特性等)を大きく左右するため、加工形状を高精度に管理する必要がある。FCX-07では水晶片が小型になることを考慮して最適な加工形状を選択し、その加工形状が得られる加工条件と加工装置を新たに導入した。併せて、人工水晶の原石から小型の水晶片を効率良く加工するためのプロセス改善を行い、原材料の有効活用を図っている。その他、水晶振動子の組み立て工程の機械的精度や材料精度の向上を図ることによって、微細な加工が可能となっている。この事も製品の小型化に大きく寄与している。
FCX-07は、電子部品の小型化が必須であるモバイル機器、中でもデジタルチューナや無線LANなどの無線モジュールに使用される例が多くなっている。これら無線機能は、携帯電話機等の回路上ではモジュール部品としてメイン基板上に実装されることが主流になっている。このため、モジュール自体のサイズも小型・薄型化が要求されており、最近の例では10mm角を切るような小型のモジュールが使用され始めている。このモジュールに使用される水晶振動子は他の用途よりもより一層小型化要求が強いため、FCX-07に対する市場要求度は高まっている。今後は、さらに小型・高機能化を要求される電子機器、小型医療機器等に採用されて行くものと考えられる。対応周波数範囲の拡大、通信機器を視野に入れた周波数の高精度化、車載機器対応の高信頼性化などを追求し、幅広い市場の要求に応えて行く。